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『連載終了!少年ジャンプ黄金期の舞台裏』がおもしろい!!【書評】

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巻来功士(まきこうじ)という、その昔少年ジャンプで漫画の連載をしていた漫画家の自伝的な漫画を興味本位で読んでみた。結論から言うととても面白かった。

この本を知ったとき、巻来功士という漫画家の名前にはピンと来なかったが、僕が長年に渡り愛読していた少年ジャンプの裏話というタイトルに惹かれ購入した。愛読していたというのは2015年の秋ごろに。ワンピースでルフィがドフラミンゴを倒したところで購買するのを止めたからだ。理由は単純に「ジャンプがつまらなくなった」から。

そう感じるようになったのは、僕が大人になりすぎたのか漫画のクオリティが下がったからなのか。そんなことはどうでもいいんだけど、この本は、僕がジャンプを毎週楽しみにしていた『少年ジャンプ黄金期』の舞台裏の話ってことで、久しぶりにワクワクしながら読み始めた。

「これ読んでほしい編集者、いっぱいいるわぁ」森田まさのり

まずこの本の帯を『ろくでなしBLUES』『べしゃり暮らし』の作者である、森田まさのりが書いている。巻来功士という名前を知らない僕は、この帯を見て「あ、森田まさのりが帯を書いてるから本物のジャンプ漫画家だ」という根拠のない安心感を得た。

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巻来功士という漫画家

この漫画家を調べてみると、なんと少年ジャンプで4回も連載している。しかし一番長く続いた『ゴッドサイダー』という漫画でさえ、1987年~1988年の連載なので、まだ言葉を覚え始めたばかりの当時の僕が知るはずもない。

しかしゴッドサイダーの絵を見てみると、「あーー、この漫画家か!知ってる知ってる!」と思い出した。多分まだ街に古本屋が溢れていた少年時代に、立ち読みでもしたんだと思う。

ちなみにゴッドサイダーの続編が、コミックバンチや月刊ヤングチャンピオンでやっていたことは知らなかった。

北条司との出会い

『キャッツアイ』『シティーハンター』『エンジェル・ハート』でおなじみの北条司が、巻来功士のデビュー前の同じ大学の学生として本書に登場する。沢山の漫画コンクールに応募するが中々結果が出せない巻来功士を横目に、サラッと連載が決まり大学の卒業と同時に連載を決める北条司。

巻来功士が北条司を追いかけるように、その後見事にプロの漫画家としてデビューする序盤のエピソードを読んでいるころには、この本に夢中になっていた。

だって北条司が一般人として登場するんだから。

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出典:『連載終了!少年ジャンプ黄金期の舞台裏』より

原哲夫のアシスタント時代

デビューはジャンプではない他誌だったが、ようやくジャンプで連載をつかみ取った。そして連載が開始するまでの間、原哲夫のアシスタントをやっていた!

『北斗の拳』の原哲夫です。

しかも北斗の拳の第一話と二話のアシスタント。北斗の拳のザコキャラの目玉が飛び出るシーンの目玉の描き方をアシスタントながらに原哲夫にレクチャーしているエピソードも胸熱。巻来功士はグロい絵を描くのが得意ですからね。そしてこのエピソードでは天下のジャンプで連載している漫画家の熱と苦労を垣間見れる。

今ではイカつい見た目の原哲夫だけど、20代の若いころの彼はとても好青年に見えるね。

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出典:『連載終了!少年ジャンプ黄金期の舞台裏』より

ライバルは荒木飛呂彦

巻来功士の描く漫画は少年漫画らしくないグロテスクな描写や表現が多く、ホラー寄りの漫画家として荒木飛呂彦がライバルだった。あのジョジョの荒木飛呂彦です。

当時のジャンプ副編集長が「ジャンプにホラーは1つでいい」といい、巻来功士が当時連載していたゴッドサイダーとジョジョが戦うことになる。

結果はジョジョの連載の長さを知っていれば分かるように、負けてしまった。

シンプルに作品がジョジョより劣っていたのもあるのかもしれないけど、編集者がコロコロ変わったり、ビジネスとして運もなかったように感じる。

作中では荒木飛呂彦は意外なほど社交的で驚いた。もっと芸術家のような振る舞いだと想像していたから。

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出典:『連載終了!少年ジャンプ黄金期の舞台裏』より

少年史の楔からの解放

巻来功士は少年誌には合っていなかった。ただ夢中に少年誌で漫画を連載することを追いかけていたが、ジャンプから脱することで精神的に自由になれたと書かれている。エロやグロテスクな描写も少年誌ように抑え、描きたい漫画を我慢して少年誌に拘ってきていた。

この時代、他の若手の漫画家も「ジャンプ以外で漫画を描くなら漫画家を止める」と言っていたり、集英社という会社に漫画家が心酔しているように描かれている。描きたい漫画ではなくて、会社が求めている漫画を描くことが当たり前の世界。僕も仕事として漫画を描くのなら会社が求めているモノを生み出すのが当たり前、と素人ながらに感じてしまうのだけど。

でもこの作者は「戦って死んでも、そのたびに友情や愛の力で蘇る漫画なんて描かない!!」と。

沢山の経験をして自分の戦場は少年誌ではなく、青年誌だと気が付いたんですね。

そしてスーパージャンプで「ミキストリ」という作品が人気作になり、ついに芽が出る。

あとがきが面白い

予備知識なしでこの本を読んだのだけど、本編さながらあとがきも面白かった。あとがきでは堀江信彦という、江口寿史や原哲夫、北条司を担当していた元編集者であり、5代目ジャンプ編集長。この人と巻来功士の対談が数ページ掲載されている。

ここでは当時の巻来功士への思いや、漫画論、編集者論について書かれている。

堀江氏は、「巻来君は縦糸の人だったんだ」と言っていて、漫画家の縦糸と横糸の話がとても面白い。

縦糸・横糸とは

巻来「縦糸?ですか。」

堀江「ストーリーラインね。それで漫画にはもう一つ、横糸が必要なんだ。こっちは演出やキャラクター作り。巻来君は縦糸が上手かったんだよね。ところが編集者が手助けできるのも縦糸なんだ。」

本書 あとがきより

つまり巻来功士がジャンプで成功しなかったのは、横糸より縦糸のセンスが高かったため、編集者が上手いアドバイスを出せなかったと言っている。はっきり言って、何をいまさら言ってるんだよ、20年早くそれを伝えてやれよと思うけど。

荒木飛呂彦も同じ縦糸が得意な漫画家だったらしいのだけど、自分で足りないのは横糸だと気が付き、横糸を勉強してジョジョをヒット漫画に繋げたそう。だからどんどんジョジョのキャラクターは派手になっていったのか…?

ジャンプでヒットする漫画は圧倒的に横糸が上手い漫画らしいのだが、確かにそうかもしれない。ドラゴンボールもストーリーというよりもキャラクターが面白いもんな。

まとめ

漫画が好きならオススメ。というより、この本自体が面白い漫画なので。

この本を読んで、巻来功士はジャンプで鳴かず飛ばずで青年誌に逃げた漫画家ではなくて、青年誌で成功した漫画家というのが良く分かる。『バクマン。』などで知る漫画の裏話ではなく、本当の漫画家の苦悩や、編集者との関係、仕事としての工夫が分かった。

この本を読んだうえで、巻来功士さんの他の漫画も読んでみたくなる、面白い漫画でした。

おしまい。

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